一週間で身につくC言語の基本

おさえておきたいプログラミングの基本

コラム14. :C言語とオブジェクト指向


■ C言語は構造化プログラミング言語

このコラムのいくつかのトピックでもすでに取り上げたように、C言語というプログラミング言語は1972年に開発された言語で、ITという変化の激しい世界の中では非常に歴史の古い存在で、それだけ長く残ってきたことは偉大なことではありますが、どうしても「時代遅れ」の部分があることも事実です。

そもそも、C言語というプログラミング言語は、構造化プログラミング言語と呼ばれるもので、プログラム全体を段階的に細かな単位に分割して処理を記述していく手法です。この考え方は、1960年代後半にオランダの情報工学者エドガー・ダイクストラ(Edsger Wybe Dijkstra)氏らによって提唱されたもので、C言語はそれを具現化したものの一つです。

その考え方は、「一つの入口と一つの出口を持つプログラムは、順次・選択・反復の3つの論理構造によって記述できる」というもので、この原則に従うことにより、大規模なプログラムを効率よく、少ないミスで設計・記述できるようになりました。

そして、この原則に従うことにより、大規模なプログラムを効率よく、少ないミスで設計・記述できるようになるようになったので。そしてそれは、C言語が大きく成功した理由の一つでした。

■ C言語の限界

このように、当時としては斬新な手法で開発されたC言語は、プログラミングのみならずコンピュータ関連技術の発展に大いに寄与しました。とはいえ、やはり時代の変化には抗しがたく、C言語にも限界が見えてきました。

C言語の欠点は、いくつか挙げることができますが、ここで最大の問題になったのが、「大規模開発に向かない」ということでした。

こういう言い方をすると、「それは、C言語が開発されたときのメリットの一つだったのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、C言語が出来た当時とその後とでは、「大規模」の「規模」が違ってきてしまうのです。C言語は確かに、「その当時としては」大規模開発に適した言語でした。しかし、C言語が可能にしたさらなる大規模開発には、「C言語では物足りない」という状況を創り出していったのです。なんとも皮肉な話です。

■ オブジェクト指向の考え方の導入

そのように、限界にぶつかったC言語でしたが、この状況を打破する方法として考えられたのがオブジェクト指向という考え方の導入でした。オブジェクト指向とは、ソフトウェアの設計や開発において、操作手順よりも操作対象に重点を置く考え方で、データやその集合を現実世界のモノ(Object)になぞらえた考え方です。

例えば、我々が自動車を運転するとき、自動車の内部でどのような装置が動作しているかを理解する必要はありません。ただ運転方法だけを知っていればいいだけです。このように、個々のオブジェクトに対し、操作方法を設定することでその内部の難しい詳細を覆い隠し、利用しやすくしようとする考え方がオブジェクト指向です。

このオブジェクト指向を導入すれば、プログラマーはすでに用意された完成された「部品」を上手に組み合わせることにより、簡単にプログラムができるようになります。C言語とは無関係に開発されたこのオブジェクト指向という考え方ですが、ついにその考え方がC言語にも適用されるようになったのです。

■ C++とObjective-C

C言語に対するオブジェクト指向への対応という拡張は、独自に2つの道がとられました。

一つは、最もポピュラーなオブジェクト指向言語の一つといえる、C++(シー・プラス・プラス)です。1983年にベル研究所のコンピュータ科学者のビャーネ・ストロヴストルップによって開発されたもので、当時の名前は「C with Classes」でした。

C++は、Simulaという当時使われていたオブジェクト指向言語の特徴をとりいれたもので、C++という名称の由来は、C言語に存在する算術演算子の一つで、整数型の変数の値に1を加えるインクリメント演算子「++」から来ているといわれています。「C言語より1つ進歩した」といったl気持ちなのでしょうか。

そして、もう一つが、Objective-Cです。Objective-Cは、1983年にブラッド・コックスによって開発され、そのコンパイラやライブラリを支援するためにStepstone社を創立しました。しかし、しばらくはマイナーな存在でしたが、1985年にアップルコンピュータを去ったスティーブ・ジョブズが、この言語に着目し、彼がNeXT Computer社を創立した際には、その製品であるNeXTコンピュータの主力言語となりました。

のちにジョブズがアップル社に復帰すると、この言語は、MacOSXや、iOSのソフトウェア開発に用いられるようになり、現在では、「アップル製品用のオブジェクト指向言語」として普及するようになりました。

■ その後の後継言語

前述の二つの言語、C++や、Objective-Cの特徴は、C言語のソースコードがそのまま使える、ということでした。つまり、それまでのC言語の資産を継承しつつ、オブジェクト指向プログラミングが可能である、という点が最大の特徴でした。

その後、オブジェクト指向が、プログラミングの一般的な考え方となると、C言語の記述方法などは継承しつつ、C言語とは全く違ったオブジェクト指向言語が現れ、普及するようになりました。

そのなかでもメジャーなものの一つが、Javaで、C言語/C++言語の文法を参考にしつつも、ポインタ等の低レベルな操作は基本文法から排除されており、仮想マシンの上で動作し、これにより、プラットフォームに依存しないアプリケーションソフトウェアが開発できるというC言語にはなかった特徴を持っています。

また、マイクロソフトが開発したC#言語もまた、C言語やC++言語を継承しており、これら言語の文法の利点を継承しつつ、独自の拡張がなされています。言語の開発に従事したアンダース・ヘルスバーグは、「C#」が「C++++」(すなわち「C++をさらに進めたもの」)にみえるのが由来、と語っており、このことからも、この言語がC/C++言語の後継言語であることを意識していることがわかります。

さらに、アップル社も、Objective-C言語の後継言語として、Swiftという言語を開発しました。このように、オブジェクト指向もいわば「第二世代」に入り、残念ながらC言語はますます肩身が狭くなりそうです。

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