コラム11.  :Linuxを作った男

Linuxを作った男

前回は、UNIXのお話をしましたが、そういったOSは大企業や大学などの期間で、大勢の人間と多額の予算をかけて創られたものでした。しかし、ここからの話は、そのOSを「たった一人で」創った男、のお話です。

その偉業を成し遂げた男性の名は、リーナス・ベネディクト・トーバルズ(Linus Benedict Torvalds)。作成したOSの名前は、彼の名前をとって、Linuxと名づけられました。

Linuxができるまで

彼は北欧フィンランドの出身で、1991年、当時まだヘルシンキ大学であったころ、アンドリュー・タネンバウムによって開発された、OSおよびそのカーネルである、Minixに影響され、自宅のパーソナルコンピュータの上で使えるUNIXライクなOSの必要性を感じ、趣味で自作のLinuxカーネルを作り始めました。

彼は完成したOSを独占することなく、ネット上でだれでも利用できるように、無償で提供したのです。すると、Linuxカーネルは瞬く間に世界中に拡散し、多くのプログラマーの手を経て、どんどん改良されて行きました。

もともと彼が作ったのはOSの核であるカーネルと呼ばれる部分でしたが、その後Unix関連の様々なソフトがこのOS用に移植され、ついには本家のUnixとほとんど同じ使い勝手を提供するOSにまで成長しました。

本家のUNIXを凌駕する

つまり、現在主流になりつつある、フリーかつオープンソースなソフトウェアの共同開発の最も成功した先駆けの例を創ったわけです。

その勢いはすさまじく、本家UNIX系の様々なOSを蹴散らして、あっという間にUNIX系OSの中では世界で最も普及するOSになってしまいました。実際、かつてはUNIX系のOSは専用のワークステーションでしか使用できなかった上に、高い金額で購入しなくてはならなかったわけですが、Linuxは普通のパソコンで実行できるうえに、「無料」で配布されていたわけですから、当然と言えば当然の結果でしょう。

ついには、現在は本家本元のUnixを凌駕し、様々なサーバーのOSとして利用されています。つまり、本家であるUnixのお株を奪ってしまうぐらいの存在になったのです。

マスコットはペンギン

ちなみに、このLinuxにはマスコットキャラクターがあります。名前をタックス(Tux)というペンギンで、1996年にラリー・ユーイングによって作られました。(図1.)

ペンギンであるリナックスのマスコットの概念はLinuxカーネルの開発者であるリーナス・トーバルズによるもので、Linuxロゴコンテストのためにデザインされたのがきっかけだそうです。

名前の由来は、タックスの名はペンギンがタキシードを着ているように見える (tuxedo) というところだそうで、現在Linux関連のサイトや商品のパッケージなどには必ずと言っていいほど登場するマスコットとなっており、このキャラクターを主人公にしたゲームが作られるほどの人気キャラになっています。

図1.Linuxのキャラクタータックス(Tux)

Linuxのキャラクタータックス(Tux)

Linuxのディストリビューション

さらに、今日ではLinuxの普及に伴い国際規格が策定され、Linuxカーネルを使用し、Linux Standard Base (LSB) Core Specification (ISO/IEC 23360シリーズ) に準拠したOSが、OSとしてのLinuxであるとされています。

ディストリビューションも、Debian(とその派生であるUbuntu、Linux Mint)、Red Hat(とその派生であるFedora、Red Hat Enterprise Linux、CentOS)、Mandriva/Mageia、openSUSE、Arch Linuxなど、様々なものが出ています。

さらに現在では、スマートフォンの主要OSであるAndroidのコアにLinuxが使われており、これもLinuxの一つのディストリビューションと考えると、たった一人の青年の情熱がコンピュータの世界に大きな革命をもたらしたことがよくわかります。