分岐処理
順次処理
変数やprintf()を用いれば、ある程度基本的な計算や画面への出漁が出来ます。しかし、プログラムとしてはいまひとつ物足りないというのも事実です。これまでやってきた処理は、プログラム中に記述された様々な処理を、その順番とおり実行するだけのものでした。こういった処理を、順次処理(じゅんじしょり)と言います。(図3-1)
分岐処理
しかし、プログラムは、順次処理だけでは出来上がりません。様々な状況に応じて、違った処理を行わなくてはなりません。例えばゲームプログラムを作っているとしたら「もし、敵に当たったらゲームオーバー」など といったような、条件に応じた処理の分岐が必要になります。こういったように、ある条件で処理の流れが変わる処理を、分岐処理(ぶんきしょり)と言います。(図3-2)
図3-1:順次処理 | 図3-2:分岐処理 |
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処理が順次実行される | 条件によって、処理の流れが変わる |
C言語では、分岐処理を記述するための命令として、if(イフ)と、switch(スイッチ)という命令が用意されています。ここでは、それらについて解説します。
if文
サンプルプログラム
では、まず手始めに条件分岐の最も基本的な処理である、if文について学んでいくことにしましょう。ifとは、英語で、「もしも」という意味を表す単語で、「もしも~だったら、…する」といった処理を 行うために用います。まずは、以下のプログラムを実行してみてください。
list3-1:main.c#include <stdio.h> void main(){ int a; printf("数値を入力:"); // キーボードから整数を入力 scanf("%d",&a); // 入力した値が、正の数かどうかを調べる if(a > 0){ printf("入力した値は、正の数です。¥n"); // 正の数だった場合に実行 } }
プログラムを実行すると、コンソール画面に「数値を入力:」と表示され、横にカーソルが出て、キーボードからの入力モードに移行するはずです。まずは、ここでキーボードから正の数を入力してみましょう。
実行結果1.(正の数を入力した場合)入力した値は、正の数です。
すると、上のように「入力した値は、正の数です。」と表示されて、プログラムが終わります。また、同じプログラムでも、0、および負の数を入力すると、次のように何も表示されません。
実行結果2.(0および負の数を入力した場合)実際に、何度か正の数や負の数を入力して試して見ましょう。
scanf関数
では、一体、このプログラムはどのような仕組みになっているのでしょう。順を追って説明していきましょう。まず、5行目に出てくる以下の関数からみてみましょう。
scanf関数※scanf()(スキャンエフ)関数は、キーボードから文字列を入力する際に用いる関数です。整数型変数aに値を入れるには、先頭に&(アンパサント)をつけ、"で囲まれた部分には、%dと記入します。 どうしてこのような記述の方法になるかは、ポインタとアドレスに関する知識が必要なので、ここでは、そのようなものだと思って使ってください。
→ scanf()関数について、より詳しい解説は、こちらを参考にしてください。
if文
次に、条件分岐で用いる、if文の書式について説明します。if文は、次のような書式になっています。
if文の書式処理
}
()内の条件式が成立した時、{}に囲まれた処理を実行するのが、if文です。list3-1では、a>0、つまりaが0よりも大きい時に条件が成立し、{}内のprintf()文が実行されるわけです。 >は、比較演算子と言います。比較演算子は、以下のようなものがあります。(表3-1)
演算子 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
> | より大きい | a > 0 |
>= | 以上 | a >= 0 |
< | より小さい | a > 0 |
<= | 以下 | a <= 0 |
== | 等しい | a == 0 |
!= | 等しくない | a != 0 |
以上より、このプログラムが、キーボードから入力された数値が正の整数のときは「入力した値は、正の数です。」と表示され、そうでない場合は何も表示されないのです。 ただ、出来ることならば、正の数以外の値が入力された時にも何らかのメッセージを表示したいものです。そこで、次はそれをできる仕組みを紹介しましょう。(図3-3)
図3-3.list3-1のフローチャート |
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※注意
VisaulStudio2015では、通常セキュリティー上の理由から、scanf関数は使えません。しかし、かわりにscanf_s関数を用いるか、プロジェクト作成時にSecurity Development Lifecycle(SDL)チェックのチェックを外すことによって、使用可能になります。
if~else文
サンプルプログラム
まずは、以下のプログラムを実行してみてください。
list3-2:main.c#include <stdio.h> void main(){ int a; printf("数値を入力:"); // キーボードから整数を入力 scanf("%d",&a); // 入力した値が、正の数かどうかを調べる if(a > 0){ printf("入力した値は、正の数です。¥n"); // 正の数だった場合に実行 }else{ printf("入力した値は、正の数ではありません。¥n"); // 0か、負の数だった場合に実行 } }
このプログラムの実行結果は、実行後正の整数を入力した場合は変わりません。しかし、負の数を入力した場合は、以下のような実行結果になります。
実行結果(0および負の数を入力した場合)入力した値は、正の数ではありません。
else
ここで出現した、if~else文は、以下のような書式になっています。
if~else文の書式処理①
}else{
処理②
}
if文の()内の条件式が満たされた時には、処理①が実行されるのは、if文単体の時と変わりません。しかし、それ以外の場合、つまり条件式が満たされなかった場合は、else(エルス)文以下の処理②が実行されます。 したがって、このプログラムは、aが正の整数ではない、つまり、0か、負の値であるのならば、「入力した値は、正の数ではありません。」と出力されるのです。
図3-4.list3-2のフローチャート |
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else if
サンプルプログラム
ifとelseを用いた場合、ある条件が成り立つ場合と、そうでない場合の処理が書けました。しかし、実際には、条件が複数から成る場合も多く存在します。そういう時はどのようにすればよいのでしょうか?その時に役に立つのが、else if(エルスイフ)です。まずは、以下のサンプルを実行してみましょう。
list3-3:main.c#include <stdio.h> void main(){ int num; printf("1~3の値を入力してください:"); // キーボードから整数を入力 scanf("%d",&num); // 入力した値が、正の数かどうかを調べる if(num == 1){ printf("one¥n"); // numが1だった場合の処理 }else if(num == 2){ printf("two¥n"); // numが2だった場合の処理 }else if(num == 3){ printf("three¥n"); // numが3だった場合の処理 }else{ printf("不適切な値です。¥n"); // それ以外の値が入力された場合の処理 } }
one
不適切な値です。
else if
実行した結果、1を入力すれば、oneと、2を入力すればtwoと、3を入力すればthreeと表示されることが分かります。それ以外の値を入力すれば、「1~3の値を入力してください」と このifとelseだけでは、一つの条件が成り立った時と、それ以外の場合の処理しか実行できませんが、else ifを用いれば、複数の条件の場合についての場合分けが可能です。else ifを含むif文の書式は以下の通りになっています。
if~else if~else文の書式処理①
}else if(条件式②){
処理②
}else{
処理③
}
条件式①が成り立てば処理①が、条件式②が成り立てば処理②が実行され、そのどちらの条件も成り立たなければ、処理③が実行されます。なお、else ifは、ifの後に何個でも追加することができます。 なので、いくつでも条件を追加することが可能です。
そのため、list3-3の処理の流れを記述すると、以下のようになるのです。(図3-5)
図3-5.list3-3のフローチャート |
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複雑なif文
サンプルプログラム
つぎは、これらの知識を組みあわせて、更に複雑なifの構文を作り上げてみましょう。まずは、以下のサンプルを実行してみてください。
list3-4:main.c#include <stdio.h> void main() { int dice; // サイコロの目を入力 printf("1から6の数値を入力してください:"); scanf("%d",&dice); // 値が、サイコロの目の範囲内かどうかを調べる if(1 <= dice && dice <= 6){ // さいころの目が、偶数か、奇数かで、処理を分ける。 if(dice == 2 || dice == 4 || dice == 6){ printf("丁(チョウ)です。¥n"); // 偶数ならば丁(チョウ) }else{ printf("半(ハン)です。¥n"); // 奇数ならば半(ハン) } }else{ printf("範囲外の数値です。¥n"); } }
このプログラムの実行結果は、大きく分けて3通りに分けられます。まず一つ目が、1から6の間の偶数、つまり、2,4,6といった値を入力した場合です。 以下のように、「丁(チョウ)です。」と表示され、プログラムは終了します。
実行結果1(2,4,6が入力された場合)丁(チョウ)です。
次に、同じく1から6の間で、今度は、1,3,5といった奇数を入力すると、「半(ハン)です。」と表示され、プログラムは終了します。
実行結果2(1,3の,5が入力された場合)丁(チョウ)です。
最後に、1から6以外の整数、つまりさいころの目に該当しないような数値を入れると、「範囲外の数値です。」と表示されて、プログラムが終了します。
実行結果3(範囲外の数値が入力された場合)範囲外の数値です。
ネスト
さて、このプログラムを見ると、if文の中に、更にif文が入っています。これを、if文のネストと言います。ネストは、if文に限ったことではなく、この後紹介する繰り返し処理など でもしばしば見られる書式です。「何かの処理の中に、さらに何かの処理が入っているのがネストである」と理解すると良いでしょう。
if文のネストif(条件式②){
…
}
}
このように、if文はネストが可能ですが、二重、三重にネストをすることも可能です。ただ、あまりネストを多用すると、プログラムが複雑になり、わかりずらくなるので気をつけましょう。
論理演算子
また、次に注目したいのが、10行目および、12行目の、if文の中身です。ここでは、||や、&&が間に挟まって、複数の条件式が出ています。これらの記号は、論理演算子(ろんりえんざんし)と言い、 if文などで複数の条件を調べるときには欠かせないものです。なお、C言語で用いられる論理演算子は、以下のとおりです(表3-2)。
演算子 | 名称 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|---|
&& | 論理積(ろんりせき) | AND(アンド) | a == 0 && b == 0 // aが0かつ、bが0ならば |
|| | 論理和(ろんりわ) | OR(オア) | a == 0 || a == 1 // aが0か1ならば |
! | 否定(ひてい) | NOT(ノット) | !(a == 0) // a==0でない場合、真となる |
例えば、&&は、AND(アンド)と言い、複数の条件がすべて成り立っているときに真となります。10行目の例で言うと、「変数diceの値が1以上であり、かつ6以下」ということになります。 また、||は、OR(オア)と言い、複数の条件のうち、どれかが成り立っているときに真、ということになります。12行目の例で言うと、「変数diceが2か、4か、6であれば」ということになります。
また、1から6の範囲の数値で、2,4,6以外の値となると、必然的に残りは、1,3,5となり、これが、「半(はん)」となることから、else文での処理は、「半(ハン)です。」と表示する ことになります。これら一連の流れの流れを記述すると、以下のようになるのです。(図3-6)
図3-6.list3-4のフローチャート |
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switch文
サンプルプログラム
list3-3のような、else ifを用いた多数に分岐する条件分岐は、値が整数値であれば、switch(スイッチ)文を用いて以下のように書くことができます。
list3-5:main.c#include <stdio.h> void main(){ int num; printf("1~3の値を入力してください:"); // キーボードから整数を入力 scanf("%d",&num); // 入力した値が、正の数かどうかを調べる switch(num){ case 1: printf("one¥n"); // numが1だった場合の処理 break; case 2: printf("two¥n"); // numが2だった場合の処理 break; case 3: printf("three¥n"); // numが3だった場合の処理 break; default: printf("不適切な値です。¥n"); // それ以外の値が入力された場合の処理 break; } }
switch文は、後の()内の値によって、条件を分岐させる命令です。条件は、case(ケース)で書き、そのあとに値が来ます。最後にある、default(デフォルト)という条件は、 caseで出てきたいずれの条件にも当てはまらない場合を示しています。書式は、以下のようになります。
switch文
switch文の書式case 値①:
処理①
break;
case 値②:
処理②
break;
・・・
default:
処理③
break;
}
break
caseおよびswitchの後に出てくるbreak(ブレイク)というのは、処理の終了を意味します。breakがなくても、エラーにはなりませんが、そのあとの処理が続けて実行されてしまいますので、注意が必要です。
練習問題 : 問題3.