構造体

構造体とは

プログラムがある程度複雑になってくると、一つの概念に対して複数の変数が割り当てられることがあります。例えば学校で学生のデータベースを作る時、その学生の学生番号、名前、年齢 といったデータをひとまとめにして扱う事になります。

そういったプログラムを作る時、関連する変数がバラバラになっていると、取扱が非常に不便です。そこで便利なのが、構造体(こうぞうたい)という概念です。構造体とは、複数の変数をひとまとめにするものです。

たとえば、学生番号を表す整数型の変数id、名前を表す文字列name、年齢を表す整数型変数ageをひとまとめにして構造体にすると、以下のようになります。

構造体テンプレートの定義
struct student{
    int id;               // 学生番号
    char name[256]; // 名前
    int age;             // 年齢
};

このような、構造体の定義を構造体テンプレートと言います。structが、構造体を表すキーワードであり、そのあとのstudentが構造体の名前になります。 構造体の名前は、任意につけることができます。{}の中に、ひとまとめにする変数を定義します。最後は;(セミコロン)で終了します。

この構造体を実際に使用するには、

構造体変数の定義
struct student data;

とすると、dataという名前の構造体変数を定義できます。

サンプルプログラム

では、実際に来れに代入したり、出力したりするサンプルを見てみましょう。

listex5-1:main.c
#include <stdio.h>
#include <string.h>

//	学生のデータを入れる構造体
struct student{
	int id;			//	学生番号
	char name[256];	//	名前
	int age;		//	年齢
};

void main(){
	struct student data;
	data.id = 1;	//	番号を設定
	strcpy(data.name,"山田太郎");	//	名前を設定
	data.age = 18;	//	年齢を設定
	//	データの内訳を表示
	printf("学生番号:%d 名前:%s 年齢:%d¥n",data.id,data.name,data.age);
}
実行結果
学生番号:1 名前:山田太郎 年齢18

構造体の成分の変数のことを、メンバと言います。このメンバにアクセスするには、通常以下のように行います。

構造体変数の成分へのアクセス
(構造体変数名).(メンバ)

このサンプルでは、構造体変数はdataなので、そのメンバidへのアクセスは、間に"."(ピリオド)をつけて、"data.id"とします。このサンプルでは、13~15行目で、 それぞれの成分に値を代入しています。先頭に"data."がついているだけで、それぞれの成分へのアクセスは、普通の変数とは変わりません。

C言語には、このほかに、構造体によくにた共用体(きょうようたい)という概念も存在します。興味のある方は、以下のサイトを参考にしてみてください。

→ 共用体について

構造体配列

サンプルプログラム

次は、構造体を配列にして使用する例を紹介します。以下のプログラムを実行してみてください。

listex5-2:main.c
#include <stdio.h>
#include <string.h>

//	学生のデータを入れる構造体
struct student{
	int id;	//	学生番号
	char name[256];	//	名前
	int age;		//	年齢
};

//	構造体の名前をtypedefで定義
typedef struct student student_data;

void main(){
	int i;
	student_data data[] = {
		{ 1,"山田太郎",18 },
		{ 2,"佐藤良子",19 },
		{ 3,"太田隆",18 },
		{ 4,"中田優子",18 }
	};
	//	データの内訳を表示
	for(i = 0; i < 4; i++){
		printf("学生番号:%d 名前:%s 年齢:%d¥n",data[i].id,data[i].name,data[i].age);
	}
}
実行結果
学生番号:1 名前:山田太郎 年齢:18
学生番号:2 名前:佐藤良子 年齢:19
学生番号:3 名前:太田隆 年齢:18
学生番号:4 名前:中田優子 年齢:18

typedef

配列変数について説明する前に、以下の処理について説明しましょう。

構造体名の変更
typedef struct student student_data;

先頭に出ているtypedefは、既存の型に新しい名前(別名)を付けるためのキーワードで、このプログラムの場合、studentという構造体をstudent_dataというなまえに変更するという事を意味します。

再定義した構造体でのデータの定義
student_data s;

のように、先頭に"struct"キーワードをつけることなく構造体変数を定義することが可能です。

次に、構造体変数への値の代入ですが、初期値の設定の場合、16行目から21行目のように、通常変数の場合のように、{}を使って値を一度に複数定義することができます。外側の{}の中に、定義する値の数だけ、{}でメンバを定義して、間を,(コンマ)で区切ります。メンバの値の定義は、メンバの並び順に正しく代入する必要があります。

構造体のポインタ

サンプルプログラム

最後に、構造体とポインタの使い方について説明していきましょう。以下のプログラムは、listex5-2と同じ処理をポインタを使った処理に書き換えたものです。 少し長いですが、入力して実行してみてください。

listex5-3:main.c
#include <stdio.h>
#include <string.h>

//	学生のデータを入れる構造体
typedef struct{
	int id;			//	学生番号
	char name[256];	//	名前
	int age;		//	年齢
}student_data;

//	構造体のデータを表示する関数
void setData(student_data*,int,char*,int);
void showData(student_data*);

void main(){
	student_data data[4];
	int i;
	int id[] = { 1,2,3,4 };
	char name[][256] = { "山田太郎","佐藤良子","太田隆","中田優子" };
	int age[] = { 18,19,18,18 };
	//	データの設定
	for(i = 0; i < 4; i++){
		setData(&data[i],id[i],name[i],age[i]);
	}
	//	データの内訳を表示
	for(i = 0; i < 4; i++){
		showData(&data[i]);
	}
	return;
}
//	データのセット
void setData(student_data* data,int id,char* name,int age){
	data->id = id;				//	idのコピー
	strcpy(data->name,name);	//	名前のコピー
	data->age = age;			//	年齢のコピー
}
//	データの表示
void showData(student_data* data){
	printf("学生番号:%d 名前:%s 年齢:%d¥n",data->id,data->name,data->age);	
}

実行結果は、listex5-1と同じなので省略します。構造体ポインタに関する説明をする前に、5~9行目を見てください。

構造体テンプレートの定義と、名前の変更の一括処理
typedef struct{
    int id;               // 学生番号
    char name[256]; // 名前
    int age;             // 年齢
}student_data;

アロー演算子

この処理を行うと、構造体テンプレートの定義と、名前の変更が同時にできます。したがって、16行目のように、"struct"キーワード抜きで構造体変数を定義できます。

次に、本題であるポインタの構造体について説明しましょう。通常の構造体では、メンバにアクセスするのに"."を用いますが、ポインタの場合は、"->"(アロー演算子)を用います。(表5-1)

表5-1.通常の構造体とポインタの構造体(student_data)
通常の構造体構造体のポインタ
定義student_data datastudent_data* pData
メンバdata.id
data.name
data.age
data->id
data->name
data->age

showData()関数およびshowData()関数では、ポインタの形式でデータが渡ってきます。そのため、33~35行目、もしくは39行目では、アロー演算子が用いられています。ここで、値の表示およびデータの代入が行われています。(図5-1)

図5-1.setData()/showData()の働き
setData()/showData()の働き

通常、構造体を関数の引数として渡す場合は、このサンプルのようにアドレスを渡すのが普通です。では、いったいなぜそのようなことをするのでしょう?次でそのことを詳しく説明しましょう。

ポインタ渡しとデータ渡し

サンプルプログラム

ポインタ渡しとデータ渡しの違いを理解するために、まずは以下のプログラムを入力・実行してみてください。

listex5-4:main.c
#include <stdio.h>

//	データを入れる構造体
typedef struct{
	int a;
	double d;
}num_data;

//	二種類の値設定関数
void dealData1(num_data data);		//	値渡し
void dealData2(num_data* pData);	//	ポインタ渡し

void main(){
	num_data n1 = { 1, 1.2f },n2 = { 1, 1.2f };
	printf("n1のアドレス:0x%x n2のアドレス:0x%x\n",&n1,&n2);
	dealData1(n1);
	dealData2(&n2);
	printf("n1.a = %d n2.d = %f¥n",n1.a,n1.d);
	printf("n2.a = %d n2.d = %f¥n",n2.a,n2.d);
}

void dealData1(num_data data)
{
	printf("a=%d f=%f\n",data.a,data.d);
	printf("dealData1にわたってきたデータのアドレス:0x%x¥n",&data);
	//	値の変更
	data.a = 2;
	data.d = 2.4;
}
void dealData2(num_data* pData)
{
	printf("a=%d f=%f\n",pData->a,pData->d);
	printf("dealData2にわたってきたデータのアドレス:0x%x¥n",pData);
	//	値の変更
	pData->a = 2;
	pData->d = 2.4;
}

実行結果
n1のアドレス:0x2c728 n2のアドレス:0x2cf710
a=1 f=1.200000
dealData1にあたってきたデータのアドレス:0x2cf630
a=1 f=1.200000
dealData2にあたってきたデータのアドレス:0x0x2cf710
n1.a = 1 n2.d = 1.200000
n1.a = 2 n2.d = 2.400000

実行結果より、値渡しの場合は、dealData1()関数に渡った引数のアドレスはもとの数とは異なります。ポインタ渡しのdealData2()の場合は、同じアドレスとなります。 そのため、showData1()では、値の変更を行っても、main()には反映されませんが、showData2()の場合は、アドレスが同じであることから、値の変更が反映されます。

これが、データ渡しとポインタ渡しの違いです。

データ渡しの問題点

ポインタを渡す理由は二つあります。一つは、通常、構造体のデータのサイズは大きくなる傾向があり、引数としてそのままの値を渡すと、スタック領域を圧迫してしまったり、データのコピーという無駄な処理が起こり、二重の意味でリソースを無駄にしてしまうからです。

そして、もうひとつの理由は、ポインタ渡しであれば、関数の中で値の設定などが出来るからです。値渡しでは、前述のようにコピーが発生する上に、引数として渡ってきた構造体のデータを変更しても、呼び出しもとの値に反映されません。(図5-2)

図5-2.構造体の値渡しと参照渡し
構造体の値渡しと参照渡し

以上のような理由から、構造体を関数の引数として渡す場合は、ポインタ渡しを用いるのが普通なのです。